卸売業向けインストラクションコース  【コンテンツ】

卸売業の情報システム − 先進情報システム運営の前提条件編

第46回「メンテナンスについて(その3)」

3.メンテナンスについて

(1)メンテナンス体制

A商品マスタのメンテナンス
A商品マスタデータ活用の現実
商品マスタの項目は主に固定項目を参照して、商品の内容が何であるかを特定しますが、他方でマスタ情報またはトランザクションへの付加情報として業務の手続きを成立させたり経年変化の状態を表したりすることがあります。また単価を導くための判断材料にしたり個人別に対応するための判断材料(アレルゲンなど)を示すこともあります。
しかし利用される情報にどのような項目が必要かを予め見極めることはやや難しいので、法令で定められた情報に加え、業界が推奨する情報も適宜作成者(主にメーカー)と利用者(流通業者や消費者)の間で交わすことになります。
個別の例示は業種業界により多種多様で分類すらできません。ここではその中でも最も共通する商品の開発前段階から固定項目は設定され標準的なシステムに適合できるように項目が加えられ、実際の販売過程から最終の廃棄までの商品ライフサイクル全体におけるマスターデータの活用について少し解説してみたいと思います。

作成側と利用側の同期はどうあるべきか?

製配販で交換される商品情報は一般的には商品発売日の直近で公開されることが多いと思います。しかしこれからリアルタイム化や広範な情報共有が実現されるとするならば、新商品発売の段階での情報交換にとどまらず商品開発の企画の段階から始める手もあると考えられます。その際のデータ交換は現状のように固定項目を中心にバッチ伝送する形ではなく商品開発の段階から発売時期に該当する季節の販売コンセプトなどを織り交ぜ事前の評判(場合によってはテスト的な消費情報を含めます)も含めてリアルにリンクするようになるのではないかと思います。また新商品時の紹介情報は数週間後には更新され、定番商品に成長した商品の紹介に置き換えられることでしょう。従来のようにひとつの決まったアプローチだけではなく商品のライフサイクルに合わせた紹介が行われると良いでしょう。そのヒストリーが未導入の店舗の参考にもなる形が理想的です。そして廃番を迎える際にも次の新商品への切替情報などをしっかりと連携して、立つ鳥跡を濁さず廃番となるようにできると良いでしょう。

作成者と利用者と購買者の同期まで考える

商品情報の本来の利用者は人数で言えば消費者が最も多いはずです。流通関係者は小売業担当者や卸売業担当者をあわせて数百人が注意深く商品情報(この場合は特定/目的の1アイテムを指します)を参照するでしょう。このとき考えておかなければならないこがあります。それは20世紀の商品情報はほぼ流通関係者のみを対象とした限定項目で、その頃の業務のスピードやテンポに合っていればよかったのに対して、いま時の商品情報は大幅に消費者に役立つ内容を強化しリアルタイムにどこでも正確にアクセスできるように仕上げなければならないということです。果たしてそこまでできていますか?全体としては不十分だと感じます。壁がいくつかあってかつての秘密の情報を消費者に公開したくないという気持ちが働いている事がいま時の対応への阻害要因だと言えましょう。
その壁の一つは「他社に情報が漏れること」だと言われます。商品情報が競合他社に漏れることが大きなリスクだと考えられるのです。他社商品の調査は各メーカがしのぎを削る大きな課題で、自社商品の弱みがあれば次には勝てるように改善ポイントにして強化改善された新商品を開発するのだろうと思います。それ自体が新商品情報でどの程度作戦変更に至るのか?あるいは撤退まで考える判断もありえます。これらはものすごいリスクだと言えましょう。他方で商品情報を適切な消費者にタイムリーに提供することで得られるメリットを考えるべき時代が来たのであれば、情報提供の壁が吹っ飛んでロイヤルカスタマと情報交換するように変わるのかもしれません。全カテゴリの全商品が対象とは申しませんが、そのような流れがあるのではないかと考えるところではあるはずです。
次に企業/企業グループによっては「商品企画〜マーケティング〜生産」と「販売企画〜短期的販売促進計画〜配荷〜リベート精算」の流れが分断されている場合があります。この分断という課題は深刻で部門間で商品情報を秘密にします。詳細の解説は省略しますが、この状態では「計画が予定に、予定が発売に、発売が評判に、評判が定着に、そして定着が繰り返し購買に」という消費財のマーケティングの本筋ルートを辿れなくなってしまいます。分断によりお互いの見込を共有しなかったり特売企画や生産計画がくずれたりします。この本筋ルートのトレースには流通企業全体として大きな期待ができます。この理解を得られないことが分断を助長/放置し2番めの壁になります。
そして3番めの壁は「商品情報に興味がなくなってきた」ことです。売り手は情報提供に力を入れていても買い手が業務がルーチンワーク化してしまっていて「いつものとおりに良きに計らえ」という気持ちになっている場合が大問題だと考えます。さらにその買い手は消費者に売る際も商品知識が欠けていて十分に情報を伝えられていません。本当ならば購買者の反応(指標化された指数を指しています)は商品開発者だけでなく、小売業や卸売業がもっと関心をもつべきだと思います。もちろん関心が深く十分に学習している企業もあります。しかし少なくなってきてる傾向があります。商品アイテム数が過剰なのかもしれません。そうであればデジタル化を促進し「いつものこと」はAIなどに任せ、その先のマーケティング時代に進むと良いでしょう。

以下にシステムに適合させることや、個別の対応に合わせた応用がメインになる様子を概念的に図示します。
商品情報の適合

つづく(次回は第2部 3.メンテナンスについて(1)メンテナンス体制 A商品マスタのメンテナンス B商品の情報をいつ見るか? です)

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