卸売業向けインストラクションコース  【コンテンツ】

卸売業の情報システム − 先進情報システム運営の前提条件編

第45回「メンテナンスについて(その2)」

3.メンテナンスについて

(1)メンテナンス体制

A商品マスタのメンテナンス
@商品マスタデータの3つの用途特性
商品マスタには固定的な項目を軸とした概念が支配的ですが、実際には運用上の用途や目的、プログラム上での活用等によって、多岐にわたる項目が商品マスタにはあるようです。ここではそうした項目の分類やその機能・用途について述べてみます。
a 共通固定の情報項目【本来のマスタ的な項目】
商品名・JANコード・規格【重量・サイズ】は原則一度設定されたら変わらない項目です。商品の仕様が少しでも変更されたならば、JANコードを変えるということが国際ルールですので、JANコード=GTIN-13.に対して固定的な情報がついていて、他の商品ではないということです。本来はJANコードで商品が識別できるという前提での各種コードや名称等の情報が付随して固定という決まりなのですが、前述しましたように流通業は特に様々な用途で記号化/分類化し、情報システムで利活用することが多いので、「共通固定」とともに一部半固定情報といえるものもここに分類されます。例えば単品【バラ】は同一でも荷姿・入数・GTIN14が変わる場合などです。従来品からこうした荷姿情報が変更されることがあります。すると運用的に、そして卸売業営業的にも従来品と同様に取り扱おうとするある種のベクトルがありますので、共通固定の仲間として一部項目の変更を甘んじて受け入れる場合があります。
また発売日・終売日などの微妙な項目もあります。メーカーが何らかの事情で発売日を変更することはよくあります。
そしてカテゴリ【商品分類】コードは「共通固定」とは言い切れない実情があります。設定者においては固定的に使われても利用者が社外の取引先等である場合、いわゆる自社カテゴリ【商品分類】コードは基本的に他社では使われることがありません。したがって「個別可変」と同様にみなされることがあるのです。データ交換では困ったことになりがちです。そういったことを避けるために相手に合わせたコード変換【自社分類→取引先分類】を行うことも多々あるし、共通のコードとしてGS1が定めたJICFS【JAN Item Code File Service の略】を用いることもあります。
b 共通可変の情報項目【何かを行うためのトランザクション的情報】
製造年月・消費賞味期限・ロットなどをトランザクションデータに加えることが求められるようになっていますので、出荷ロットごとのマスタが作られるイメージです。つまり出荷ごとに変わる内容です。これはメーカーが主に使う項目です。しかし利用者側が検品や返品回収などでも使うのでロット番号(工場や製造時期または日が特定できる記号等)は特に重要です。またメーカーの事情で言えばJANコードが同一でも生産工場が異なる場合にロット番号に工場の区別がつけてあることが一般的で流通ルート上でロット番号を確かめれば、そのメーカーはどの工場で製造されたかまでわかります。またメーカーはロット番号で微細な仕様の違いを区別していることもあり【JANコードは変えずに】メーカーが見れば分かるようにしていることもあります。こうした製配販で使うコードで出荷ごとに異なるような項目を「共通可変の情報項目」と呼びます。
c 個別可変の情報項目【相対で決めるマスタ&トランザクション的情報】
単価・都度条件・物流情報など納入先へのセットアップ項目【納入行為にも使うし、納入先が確認等を行う際にも使う項目】です。相手先によって内容が異なるので「個別可変の情報項目」と呼びます。カテゴリ(商品分類)コード、販売単価、通路番号、棚割情報など納入元と納入先の両者で使う項目が主なものです。物流作業で使う項目は年々詳細が要求されるように変化してきています。たとえば配送号車、カゴ車番号、梱番号、重量情報などです。
そして取引上必要と思われる項目もおなじで単価【別でマスタ化できる】・入数【納入先の認識が別の場合個別情報となる】など都度変更される可能性がある情報を含みます。都度変更される項目としては他にパレットはい組やバラ梱包、シュリンクパックなどがありコード化して納入先に伝えます。また消費・賞味期限、規制が量や納入タイミングと関連する場合などに、その基準チェックやその他の取引条件変更などのトリガーとして使われることもあります。

A商品マスタのメンテナンス
次の図は卸売業から小売業に商品名を提供する際のイメージを示します。メーカーから提供された商品名だけでは取引の上で不足がありますので、取引先小売業の要望に一部合わせた加工(セットアップ)がなされることがあります。またこの作業をメーカーが行うこともあります。この時点では共通固定項目ではなく個別可変項目が加わることになります。そしてさらに言えば最終的に小売業においてもメンテナンス加工作業が発生します。



つづく(次回は第2部 3.メンテナンスについて (1)メンテナンス体制 A商品マスタのメンテナンス A商品マスタデータ活用の現実 です)

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