卸売業向けインストラクションコース

卸売業の情報システム − 先進情報システム運営の前提条件編

第36回「運用体制(その3)」

消費財卸売業のシステムはいままでになく高度で複雑な要件を処理しなければならなくなり、情報システム部門はいわば先進情報システムを構築する力量を備えなければなりません。第2部では先進情報システム運営に必要な体制・運用マニュアル・メンテナンスについてカストプラス流にアレンジしてご紹介します。

1.運用体制
情報システムや物流システムを構築すると、他社と比較して(ほとんどシステム機能や性能は同じであるにも関わらず)結果が全く異なってしまうことがあります。その根本原因が「運用の質」であることが多いのです。「システムとしては完成したが、運用がうまくいかず思うような成果が上がらなかった。」という事例は最近10年で増加しているように見えます。
運用の質をしっかりと維持・向上するための情報システムに関する運用の体制について考えてみます。

(1)情報システム部門の組織体制(その3)
C企画立案の骨子のつくりかた
@情報システムと実際の運用
メールを使わない営業部員っていらっしゃいますか?本部商談やメーカーとの商談が頻繁にある方々はメールが頼りです。そんなことは知っているとおっしゃるでしょう。それではExcelの添付ファイルもかなりお使いだと思いますが、社内外でどのように活用されているかはご存知ですか?一覧表にして機能別や業務の場面フェーズごとに分類整理してみましょう。そこから、メールではなくシステムを用意したほうが良いと考えられるアイディアが浮かび上がってくるのではないでしょうか?前にも申し上げましたが、Excelの達人が重宝される企業ほどシステム化の課題が多いと思われます。次にメールでの業務運用を行う際に、不便やミスなどによる悪影響があるか調べます。すると、その問題に対応したシステムを開発したほうがいいかと気づくかもしれませんよね?
EDIのことってご理解されていますか?理解しきっている人はいないので無理もありません。しかし、全く知らないということでは済まされません。話せば長い課題と解決策があります。EDIのほとんどは30有余年バッチ転送で運用されてきましたが、いまの激しい変化を見せる業務のシーンで「遅い!」「タイミングが不都合!」と感じたことはありませんか?世の中はリアルタイム化に移行しています。そうした中で、社員さんから「そのメールとEDIをWebでミックスしたら便利なのでは?」などと訊かれたらきちんと受け答えできますか?または得意先小売業の方から訊かれ、間違った答え方をしてしまうととんでもないことになりかねません。実際の企業間データ交換をよく理解し、正解を答える必要があります。EDIを中心にスマホなども使ってリアルタイムにデータ共有・情報共有できる前提で、業務を考えると多くのシステム企画が出てくるに違いありません。

リアルタイムな情報共有

Aセキュリティ・ポリシー企画
『御社のセキュリティポリシーを少し教えてください』なんてセキュリティーの専門業者から言われたら、ちょっと不安な感じになりますか?とりあえず外側のセキュリティポリシーから説明できますか?EDIはどのように接続していますか?メール(添付ファイル・実行ファイル)はどのような制限を施していますか?社員の皆さんは不自由を感じていませんか?また、記憶媒体の社内持込み/持ち出しはどのようなルールを設けていますか?規定があれば良いのですが…特に規則はないなんてことはありませんよね?
次に内側の説明はどうでしょうか?社員の情報システムのアクセス・利用規定、データ・ハンドリング規定、ソフトウエアの規定、ネットワークの規定、ハードウエアの規定など色々ありますよね?これは情報システムの範囲を少し広めに見て文書規定などを含めて体系化されているといいですね。そしてセキュリティポリシーを話すということは社内規定のことかも知れません。単に個人情報規定のことを訊いていることもあります。

Bバックアップやリカバリーの対策企画
「DRサイトなんてあるわけないじゃない!」って言い切りますか?EDIで受注してカートで出荷して、伝票レスで納品して...支払明細を自動照合して、ファームバンキングで入金連絡が来る場合、相当にレベルの高いバックアップがとトラブル時のリカバリー策がないと怖いですよね?そうでもありませんか?
社長から「PCの保守契約がなくてもうまく行ったのだからサーバもやめられないのか?」と問われ、抵抗しながらもOKした。なんてことはないですよね?そうなった原因がサーバの経過年数でよく問われる“保守期限”ということがあります。「サーバを保守維持する部品がなくなるので販売終了後7年程度で保守ができなくなる」と、ハードウエアメーカーから連絡があり、電算室長が「これを期に新しいサーバを入れたい」などと役員会に上申したところ、却下されてしまいました。「当社はDR(ディザスタ・リカバリ)サイトはないし、データのバックアップを電算室で手作業で行ってはいますが、その媒体が同じ場所での保管なので何かあったら怖い」と言って、結局自宅に持ち帰っていたなどという話もあります。昔は企業の生命線であるくらい大事だったコンピュータがいまでは文房具程度の認識で「何があってもすぐに作り直せるだろう?」と思われていることもあります。実際はそう簡単に行かないので、根気よく説明して理解してもらい、災害対策などを考えることが必要ですね。自社に設置した“オンサイト=オンプレミス”機【マシン】で“すぐに構築し直せる仕組み”に切り替えるにはどうすればよいかを考えると、新しい企画がいくつも思い浮かびますよね。
EDIはEDIサービス側でバックアップできれば良いとか、カートの仕組みはほぼ変更がない枯れたシステムなので、納入業者に一応バックアップを預かってもらうなどの対策が考えられます。ファームバンキングはweb対応にして最小構成ではタブレットがネットに繋がれば日々の業務はなんとかできるようにするなどの対策があるでしょう。最後に残る基幹システムの中核部だけは小さなサーバで同じことができるコールドスタンバイのコンピュータを本社とは別の場所で用意しておき、毎月動作テストやデータコピーもしておくなど、色々考えている企業が多くあります。
フルの二重構成にして、サーバダウン時に自動的にフェールオーバーさせる構成を持つ企業もあります。これも案外フェールオーバー失敗が頻発します。大差がないかもしれませんね。
保守のことやオンプレミスが問題になるなら、勇気を振り絞ってクラウドで仮想マシンを稼働させる手も考えましょう。5%〜15%は高価になるかもしれませんが、「へたなバックアップ策よりも安上がりだった」という企業もあります。一度と言わず何度も検討してみましょう。

C物流システムの企画
カートピッキングシステムでバラ出荷をおこなっている場合、生産性は何行/人時?何ピース/人時、これくらいは答えられるでしょう。しかしアイドリングタイムは含まれていますか?含まれていませんか?システム企画を考えるなら、本質的な作業生産性管理とはなにか?を検討すると、いくつもの課題が見つかり、システム企画が作れるでしょう。この例で言えば、作業時間全体に占めるアイドリングタイムの割合が本当の生産性を知る鍵になりますので、把握する必要があります。
また例えば、流動棚と平棚の組み合わせを採用している場合に、流動棚⇔平棚間の商品入れ替えはどのくらいのアイテム数行われていますか?大体ならわかるのかもしれません。しかし補充量の設定とバラ棚の在庫量設定は密接な関係であり、それを最適化するにはこの入れ替えが重要な鍵になります。「毎日何アイテムほど行っており、棚種類と商品在庫設定との不整合は何%以下にとどめている。」というような答えになります。すると、もっと効率を上げることができそうな補助システムの企画が立案できそうです。

D物流センターを建てる
物流センターは誰でも作れる程度と思っていますか?10年以上の将来にまで渡って、十分使えるセンターを作りたいと誰でも思いますが、実際作れていますか?納品方式【センター納品、EC納品など】の変更、配送納品先や地域の変化、商品の入れ替わりや、商品管理の方式変更などの要因で7年そこそこで著しく生産性が落ちてはいませんか?一般的には変動要素の幅を推定する必要があります。昔は売上の伸びを何%とか言って設定しておけば済みました。いまでは考えうるすべての変動要素が与える物流センター運営への影響を考慮した設計が必要です。お金がたくさんかかるというわけではなく、ギアの遊びを確保したり、伸び代を確保する設計をします。そのコツを掴めば20年でも物流センターを(少々ドキドキしながら)使用し続けることができ、かえって安上がりになります。これを勘違いしている人が多いのは残念です。

次回はCのつづきで営業支援策やパッケージソフト、システムベンダーなどについてヒントがないか解説します。


つづく(次回は(1)情報システム部門の組織体制 C企画立案の骨子のつくりかた のつづきです)

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