卸売業向けインストラクションコース

卸売業の情報システム − 先進情報システム運営の前提条件編

第35回「運用体制(その2)」

消費財卸売業のシステムはいままでになく高度で複雑な要件を処理しなければならなくなり、情報システム部門はいわば先進情報システムを構築する力量を備えなければなりません。第2部では先進情報システム運営に必要な体制・運用マニュアル・メンテナンスについてカストプラス流にアレンジしてご紹介します。

1.運用体制
情報システムや物流システムを構築すると、他社と比較して(ほとんどシステム機能や性能は同じであるにも関わらず)結果が全く異なってしまうことがあります。その根本原因が「運用の質」であることが多いのです。「システムとしては完成したが、運用がうまくいかず思うような成果が上がらなかった。」という事例は最近10年で増加しているように見えます。
運用の質をしっかりと維持・向上するための情報システムに関する運用の体制について考えてみます。

(1)情報システム部門の組織体制(その2)
Aシステム企画の出しづらさ
情報システム部門から、会社に対してシステム企画を新しく出そうとする時、大きな企画・広範囲な企画・最先端の企画はまず通らないと思う方が多いのではないでしょうか?また、各実務部門から改革の必要性を叫ぶ声も聞かなくなってきたという企業もあるでしょう。最近の四半世紀は長引く不況の影響で“安定”や“踏襲”が正しいとされてしまいました。テクノロジーや企業倫理など「世界が新しい姿を唱えていて、実際に大きく変わろうとしている」ことは知ってはいても、自社にとっては誰が何を言おうと絵空事に感じている役員が多いのではないでしょうか?それは本気で思っているということよりも、その流れに乗るだけの我社の力量がないので危険だという本能的な反射神経が働いているのだろうと思われます。会社のトップがそう受け止めている中で改革を提唱するということは、サラリーマンにとり「身の危険を覚悟する」ということになってしまいます。その中で営業部門のチョイ悪社員が「改革だ!」と合言葉のように叫ぶ姿や、「社長が改革が必要だって20年前から言っているそうだ。」というたぐいの話題が出るたびに矛盾のようなことを感じるかもしれません。
問題解決の方法・手法としてみても「大多数の意見が表に出なくなった」、「聞かない」、「我慢する」、「出しゃばらない」という個別のリスク回避行動が問題を見極めづらくしています。社員の皆がそう思っていても、批判をするだけで自分の身が危うくなる時代ですから、「首になってからでは、もう手遅れ。」、「ほかのみんなも我慢している。」ということでおとなしくなってしまったのかと思います。このようなことではシステムによる改善など何もできません。問題が問題のまま残ることになります。

例えば、「最新の我社にとって最高の物流センターを作りたい!」と外部の協力を得て役員会に提案しても次の図のような残念な審議になることがよくあります。左半分と右半分で2つのストーリーを表しています。
物流センター役員会審議
業界企業間でも企画が通らない事態になっています。ある業務の標準化ができていて、それを次の段階に進化させるべきという意見が多くなってもなかなか進みません。ニーズが変化するわけですから標準化が捻じ曲がるのも当然のことですね。それでも大多数は何もいわず、社内の標準化対応プロジェクトの際に何かがおかしくてもとりあえず了解され、それが標準化対応事例として他社に紹介されたりします。他社がそれを参考にすることもあります。
この問題の根底は「何が正しくて何が正しくないのかわからない」という、危機的な状況に課題があるということだと思います。少々誇張があったかもしれませんが、そうした中でシステム企画をたてるのは並大抵ではありません。

B改善の方向性を探る手段の留意点
大げさな企画が通らないとなると、地道に会社のシステムの改善方向性を見極めることが良さそうです。

まずはネットで調べることの弊害についてです。
ネットで調べれば、何でもわかるという気分になってしまうかもしれません。これは実は大変な誤解だと言えます。ネットには卸売業システムの肝心なことは載っていません。しかし応用すれば問題が解決する可能性がある事項は多数載っています。答えは公表されていないのですが、ヒントは山ほどあると考えてください。つまりお金になるようなことは載っていないということかもしれません。このヒントをうまく組み合わせて答えを出すのは、少し大変かもしれません。ここで気をつけたいことが、“何でもわかったという気分”です。これが全てと思い込んでしまうと勘違いを起こしてしまい、それが失敗を誘うことになりかねません。わかっている人から見れば、なんと初心者的な失敗を繰り返しているのだろう?と思うことが多いのです。専門家から見れば、ネットに書いてあることなんて、ほとんどの場合、素人の意見に見えるともいわれます。
こうしたノウハウは提供したい側と、欲しい側の出会いのミスマッチこそが不幸で、最も良い相手が見つからないことが問題なのです。欲しいノウハウがわかっても、それを提供できる人がなかなか見つからないのも事実ですが…。実際、卸売業のシステムの専門家は絶滅危惧種であり、もうほとんどいなくなってしまいました。しかしよく調べていくと製造業のシステムの専門家も、小売業も、サービス業も20年くらい前までは大勢いた(業種・業務ノウハウで勝負していた)人たちが、少数になってしまっているのです。
今回は随分と後ろ向きに書きましたが、次の項では改善の方向性の迷いどころである事柄を解説します。後ろ向きかもしれません。

つづく(次回は第2部 1.運用体制 (1)情報システム部門の組織体制 C企画立案の骨子のつくりかた です)

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