卸売業向けインストラクションコース

卸売業の情報システム − 開発体制と手順編

第33回「開発体制と手順(その4)」

消費財卸売業のシステム開発は王道の基幹システム構築と取引環境課題に応じたテーマ別のシステム構築に分類されます。この分類を考慮しつつシステム開発手順と、それに必要とされる開発体制についてカストプラス流にアレンジしてご紹介します。

(3)設計と最適化(その2)
Aシステムの最適化
システムの最適化は企業トップの深い理解と強い支持が必要です。トップが興味もないシステムを実装しても、無駄だと思われてちょっとしたことでお取り潰しにされてしまいます。最適化の必要性確認はまずテーマで探っていくと良いでしょう。テーマとは例えば在庫量の最適化・人員配置の最適化・在庫アイテムの最適化・物流コストの最適化などです。テーマに続きそれらを解決するパッケージソフトウエアの活用を検討する必要があります。以前相談を受けた流通関連企業向けの案件で解説した例(多少編集しています)を以下に示します。
■在庫量の最適化
最近、ロジスティクスシステムの要件として「在庫量を限りなくゼロに抑える」という発想が増えてきています。欠品しない程度の適正量ではなく、”ゼロ”とはそれよりももっと少ない在庫量を言います。そのためには今までは予測機能が支配的でしたが、この1〜2年は予約的な配分、受注の制限的な配分など在庫を確保する側の立場で市場をコントロールするという、昭和時代であれば“暴挙”とも取られてしまう原理です。ゲーム機会社やスマート端末メーカーが徹底してやっています。そこまで極端ではなくとも、このコロナ禍でさらに理解が進んできているようにも思えます。責任者がどれほど興味を持つかで判断したいです。
■人員配置の最適化
これも最近の航空会社の異業種への出向など、プロフェッショナルな育成が求められる人材が熟達して業務に多大な貢献をしても、辞めてしまえば別の新規人員の育成からやり直しということでは企業の損失が大きいと言えます。そこで他の部署や企業で働いていてもローテーションによる経験値の向上効果と業務量の変動に対応させる、弾力的運用対応の効果の2つの意味を持たせる配置が考えられ始めています。本人の希望を聞いて一定期間経過後に必ず戻すという、社員重視の対応が重要です。そして、配送の問い合わせ業務などはお客様との大事な接点ですので、「トップの方の興味関心があれば」の話ですが、最近では人員をそのまま残し、対応の親切さ、ちょっとしたおせっかい、変更バリエーションの提示・提案など他社では真似のできないエクセレントさを売りにする改革を狙うシステムが注目されています。これは昭和・平成と続いた効率重視【生産性を上げ、精度を上げ、コストを下げる】と競争重視【戦うことで力量以上の成果を求める】の単純思想ではなく、お客様重視【どれだけ便利に親切に高級に快適にするかが勝負】と従業員+取引先重視【意味付けが深く維持継続の意義がある仕事の仕方】のデジタルシステムを作ることです。一方で単純作業や力仕事を自動化、ロボット化するというニーズも決り文句のようになってきました。しかし部分の改革ではなく全体の最適化コンセプト、解決・機能コンテンツをいかにうまく組み立てられるかが重要になってきています。つまり単純に人を減らすのではなく、サービスレベルを今まで実現できなかったくらいに向上させつつ各作業者のスキルアップとともにお客様重視のロジスティクスシステムに仕上げていくことになります。これはやろうとしても理想論ばかりでできないことが多いのですが、トップが強く要望するなら(段階は追うかもしれませんが)必ずや実現できると考えられます。
■在庫アイテムの最適化
これも本当に物流センターに在庫を持たなければならないものなのか?納品リードタイムが一律や最短でなければならないのか?在庫回転率の変化により経年変化で商品が劣化しないのか?など昔々の売れ筋とか死に筋とか見せ筋とかだけではない選択肢になります。これにどの程度の興味があるかが問題です。物流センターは本日も大手通販会社さんの例でお話しましたが、レイヤーを持たせる構成がいまのところ大手企業さんにとっては有力な案となっています。また、店頭の品揃えと店頭には出さない特別な在庫と物流センターの在庫(トランスファー型センターで行う場合は仕入先の在庫)とECのための在庫は、それぞれ売れ筋が異なります。店頭在庫の延長にEC在庫を加えてもあまりうまく行かないのではないでしょうか?これに興味があるのであれば、多少メーカーも巻き込んだトータルな面の在庫確保のプランが考えられます。
■物流コストの最適化
作業コストは通常生産性向上【コストが下がる】と精度向上【コストが上がる】のバランスで決まります。また、発注手配や入荷・格納コストと在庫保管・維持コストがイコール(やや日数が少ない方にオフセットしますが)になるボリュームに在庫最適化をすると在庫コストがミニマムになります。あとは設備投資と物流センターそのものの建築費、電気通信費、消耗品費などです。これらを何の目的で最適化(最少化と言わないところが味噌)をするかが、企業毎にトーンが異なってきています。5年か10年前なら最少化で良かったのですが、品質や信頼性を求めて、そこにもし遜色があれば企業イメージどころか商売にならないくらいのダメージを受けるという考え方に変わってきました。トップの方の興味を確認願いたいと思います。
■ディザスターリカバリー【DR】等のセキュリティ対策
近年はDRや大きな被災地が出た場合の物資支援拠点として使ってもらうなど物流センターのあり方が問われ、それに企業が応える形で変化してきています。台風や他の天災に被災したセンターをバックアップするために、例えば被災していない仮のセンターで10台のスマホと10台のタブレットで臨時に数日〜数ヶ月稼働させることができるなどというシステムの作り方も、事業継続性の課題解決にもなります。もし興味があれば構築してみたいですよね。

以上、このようなお話をして進んでいきます。

最適化は理解と支持で展開するのは「当社の役員会は、内容が少しでもわからなければ反対されるのでそのとおりだと感じた。」という話をよく伺いますが、始めるのも作るのも大変です。また最適化システムは「実際に運用してみないとどうなるか分からない」といった部分を必ず残しているはずなのでチューニングは当然の予定の行動として実行すべく初めから想定しスケジュール化し、また連動して予算も確保しておくことをおすすめします。

具体的な最適化システムについてはもう少し後で詳しく説明いたします。

つづく(次回は第2部 運用体制 「情報システム部門の組織改革」です)

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