卸売業向けインストラクションコース

卸売業の情報システム − コンセプト設定編

第24回「アプローチ方法の設定(その6)」

卸売業の情報システム創りに際して、どのようなコンセプトを描くべきかをカストプラス流にアレンジしてご紹介いたします。

(4)アプローチの方法の設定
卸売業のコンセプトを具体的に設定する時、なかなか企業全体の戦略にバランス良くテーマ設定できないことがありますので、ここではそれを少し整理できるように考えました。卸売業のシステム化につながるアプローチを分類整理してみます。

O業態別営業アプローチとその効果
一般的な卸売業では、複数の業態得意先があるでしょう。その得意先は同じ業態の中でも特徴の違いがあり、特別に対応を変えるということがよくあると思われます。物流サービスでも品揃えでもこのような自然の流れで対応を変化させることはもともと卸売業としては得意分野でありますから、当たり前になっているのかもしれません。しかしよくある対応は「この得意先は特殊だからこうした対応が必要である!」というものです。アプローチの仕方としては特別扱いが増えていく傾向にあり、一種の迷惑な存在とでも言わんばかりということがよく見受けられます。ここで述べるアプローチはそうした理解の仕方ではなく、むしろ積極的に業態ごとの違いを捉え、中でも特殊と思われる得意先対応を自社の標準対応プラスオプション対応程度に認識し、業態共通のニーズに応えていくやり方です。実際この方法でシェアを大きく伸ばした卸売業が何社もあり、今でも“特殊”な得意先を見つけ、共通項でくくり、販売ルートまでも開拓してみせた卸売業があるほどです。
業態別のアプローチは規模、品揃え、物流付帯サービス、受注形態、請求入金方法、セールスの訪問基準など、積極的展開と省略を組み合わせることが多いようです。例えば、小規模店舗のしかも遠方に点在する一般小売業を1業態としてくくり、営業の訪問は原則ありませんが、webでの注文やオーダーシートでの注文に限り、かつ1ヶ月間の取引金額をn万円以上と定め、納品は1週間〜10日に一回とし、支払いは郵送またはメールによる請求書に対して、振込または自動引落に限るといった感じです。また、例えば中堅のスーパーに限定し、ある一定以上の値引き対応をしますが、リードタイムを2日、全てセンター納品、年間数回の抜打ち検品を受け入れますが通常検品は「なし」としていただき、注文日をチェーンのグルーピングで月水金と火木土で6対4にバランスを取りつつ、返品率は1.5%までを瞬間の上限、年間では1%未満とし、季節の入替え返品は自然切り替えのみとして、納品アイテムのばらつきが目立つ場合はチェーンが異なるとはいえ調整していただくという、若干過激さがある約束をします。大幅なコスト改善効果を生みますが、得意先との交渉は大変かもしれません。
業態別アプローチとはこのようにメーカーの取引制度のように小売業とも条件付きの約束を交わすやり方です。

P業態別情報システムアプローチとその効果
前項の業態別のアプローチを支える情報システムの仕組みは今までのものと少し改良します。前項で述べた条件を管理するマスタテーブルを用意したり、その結果のダイナミックプライシングを行います。小売業で35年前から何度も言われているダイナミックプライシングは売れ行きや時間を見て商品価格や割引サービスの率を動的に変更するものです。これは卸売業で一日の時間内で行うことは現実的ではありませんが、1週間とか1ヶ月単位でのプライシングであれば、同様の論理で組み立てることができるでしょう。
そのためにプラスする仕組みとしてスマート系のアプリケーションを追加するとさらに効果的です。例えば、受注状況を分析し繰り返し受注されていた商品がそのサイクルを2サイクル超えても受注されなかった時にアラームを出す仕組みがあれば、状況分析の上、自社で把握できる範囲の市場全体が減少傾向でない限り発注作業か棚割が崩れているミスだとわかります。それを継続推奨したり、任せてもらえる場合には自動的に該当商品を送り込むことも考えられます。または、他社(卸売業)に他メーカー品でリプレースされているかもしれないので、チェックもしくは確認をするようにセールス等に指示することもできます。
業態別の対応マスタとスマート系の支援でミニマムコストで最大売上・利益を目指すことが可能になります。ITの力で様々なことが解決できるでしょう。

Q流通環境改善・整備への挑戦・展望
流通業全体で人材不足、能力不足が目立ってきています。卸売業はその中でも最もそれらの実態を俯瞰できるポジションにいます。流通市場が正常に機能するように環境整備できる位置づけだとも言えるでしょう。そこで、価格の妥当性チェック、物流コストの最小化、品揃えの無駄をなくす、ITによる販売状況モニタリングの評価・共有などを大きな展望を持って課題解決に挑戦すべきです。
卸売業やメーカーには消費者の皆さんに正しく楽しく商品を買ってもらえるようにするためのたくさんの知識がありますが、一方で小売業の店舗演出やイベント企画などのノウハウに追随しにくい状況も重なります。これは卸売業の買ってもらって満足してもらうマーケティングといかに顧客を来店させ気持ちをそそり、買ってもらうマーケティングとのベクトル違いをいかに認識するかの問題となっています。どちらも売ることに関しては成果をあげてはいますが、消費者の立場に立った売り方と売り手側の立場にたった売り方の競争のようなことになっていて、残念ながら卸売業・メーカーのプッシュが不足しているように思えます。
そうなると特売企画やそのための企画商品・PB商品の開発競争激化、店舗演出が豊富な品ぞろえをするために結果として売れない商品アイテムを過去に何万アイテムも導入しては消えていく繰り返しとなっています。似たような商品と似たような演出、デフレを助長するだけの特売企画に流通業界全体が疲弊しているのも事実です。さらに消費者自体がその演出に飽きています。チラシには反応せず、売れない特売が多発してしまいます。消費者とつながらないマーケティングではさらなる値引きくらいしか答えがないジリ貧状態に対応すべく卸売業・メーカーが立ち上がると良いと思います。
値引きが信仰のようになるのは間違いとわかっていても手が出ないという事態から脱却したいものです。
消費者・生活者がそこに存在するマーケティングを創る環境整備を目指しましょう。


コンセプト設定編はこれが最終回です。(次回からはパートナーの選択編【5回シリーズを予定】です)

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