卸売業向けインストラクションコース

卸売業の情報システム − コンセプト設定編

第23回「アプローチの方法の設定(その5)」

卸売業の情報システム創りに際して、どのようなコンセプトを描くべきかをカストプラス流にアレンジしてご紹介いたします。

(4)アプローチの方法の設定
卸売業のコンセプトを具体的に設定する時、なかなか企業全体の戦略にバランス良くテーマ設定できないことがありますので、ここではそれを少し整理できるように考えました。卸売業のシステム化につながるアプローチを分類整理してみます。

L要員配置、生産性分析及びコスト分析システムへの取り組みとその効果
卸売業においては要員配置の適性についてきちんと分析評価している企業は多いとはいえないでしょう。経営者からよく聞く話としては、「最小限の人員に絞って生産性をあげつつコストを抑えている。」という見解があります。しかしこれが曲者で、1週間の変動のなかで最大の波の日(のなかのある時間帯という場合もあります)に合わせるとちょっときついくらいの人員数という意味の場合があります。また曜日別に人数の調整はしているが人員数は残業がある一定の発生頻度に抑えた実績に基づく人数という場合もあります。作業者の尻をたたくという意味合いではなく、これでは最適人員に絞られているかはわからないと考えられます。実際に弊社で物流作業実態の調査を行うために10名くらいで物流センターに工程別の調査担当者を配置して作業の実態を見てみると、残業のあるはずの日に少し早めに作業が終わってしまうということはよくあることなのです。きっと調査員が観察しているということもあり、普段より作業を速いペースで終わらせてしまったからだと思われます。それでは毎日見張っていると早く終わるからそうしようかという意見が出ることもありますが、それはお勧めしていません。調査員は繰り返し作業の正常モデルと異常時・例外対応の割り込みによる生産性への影響を調べます。弊社で最も重要視していることはそれらの繰り返し作業の開始と終了時の準備・待ち時間と引渡し・次工程への連絡についてです。ここにアイドリングや迷い、タイミングを見計らう職人技などがないかをよく見ます。また、作業量の変動によって本来行わなければならない調整(段取りの変更など)が適切に行われているかをチェックします。これらの観察によって得られることは、異常時対応、例外対応、作業開始終了のトリガー設定、次工程への引継ぎ、前工程からの引き受け、準備作業の予測についての間違いです。これらに対してシステム化したり、情報表示をしたり、作業進捗をディスプレイしたり、場合により繰り返し作業を変更したりして全体の最適化を行います。
このように要員の配置は作業生産性とその前後のアイドリングと工程間インターフェースなどをつめていくと、尻をたたくのではなく、スムースに作業を進捗させられるのです。また生産性は変動することがよくあります。その変動を正確に観察してパターン化できること(特売受注が一定量を超えたときなど)を分析して、日ごろから体制を変更できるようにしておくことも重要です。
生産性がモニタできて、毎日の作業状況を分析できるようにしておき、人員配置案が計算されて自動で指示されるのが最もよいと考えられます。しかしそこまで派手にシステム化せずとも、一月に一度程度生産性を測り、工程のつながり部分をよく見て、人員数について評価報告をまとめておくと次の改善につながるので、実行してみるとよいでしょう。

M重要指標の管理とその最適化による効果
一般的に企業には重要指標があるべきですが、卸売業ではどのような指標が採用されているでしょうか?売上(予算/実績以下予実)、粗利益(予実)、仕入(予実)、原価(予実)、棚卸資産(予実)、取扱商品カテゴリ、商品取扱アイテム数(増減管理を含む)、物流/事務生産性、物流/事務精度、物流/事務/営業コストがあげられます。そして得意先/仕入先返品に関する指標、廃棄、事故、消費賞味期限、新商品、保管コスト(物流コストの詳細)、発注入荷コスト(物流コストの詳細)、在庫数量、特売/定番(売上〜の詳細)販促金(仕入販促、販売販促)、仕入基本リベート(予実)などが一般的でしょう。卸売業ならではの指標が多数あります。さらには、定番配荷、棚割シェア、新商品展開(配荷)率、キャンペーンやCMなどとの連動率、得意先における売上・利益率とシェア、メーカーブランド取組指標などが加わることもあります。
これらの指標の定義を全社で徹底することとそれぞれの重要度や達成目標を決めることになります。大事なことはこれらを他社と比べてみることです。それと、時代の流れに伴って変化することが多いので、その変化に対応した改正が必要です。重要度も変化します。達成目標についてはひとつではなく最低限、最高、平均(もしくは及第値)などを設定します。場合によってはレベル設定を行い、競わせるという方法もあるでしょう。
可能であれば、その次の段階として最適値の定義(ロジックや計算式になるかもしれません)をおこないます。また指標の組み合わせによって最適値に対する良し悪しを評価することも考えられます。この段階までくれば、具体的に最適化するための個別指示を情報システムで出すこともできるようになりますので、未来のシステム化と企業の更なる発展につなげられるのです。最近ではこのあたりをスマート端末で解決しようという試みが盛んです。

N業態別物流アプローチとその効果
得意先業態の変化は激しく、30年〜40年間の変化についていくだけで大変なことだったという認識があると思います。それと同時に最近はその変動が少し落ち着いてきたという評価があるかもしれません。しかしネット販売とリアル販売、そしてオムニチャネル化などこれから商品やサービスの流れはどのように変動するか予想もできないほど不透明です。また大型のショッピングセンターなどの商業施設の継続的な発展に問題はないのか、小規模小売業には未来がないのかなど、これからの変化には目を離すことができません。そこで物流センターの準備は混迷を極めてきます。不況が長く続いていて回復が望めないとして、さらに業態別の変化が著しいと予想するのであれば、変化に対応する物流の仕組みを構築していくしかありません。
いままでも業態別の変化に対応してきた卸売業ですが、これからは流通チャネルごと奪い取られることも多くなるでしょう。そういいながら少し耐えていると、ネット対応の依頼が舞い込んできたりと世の中何が起こるかわかりません。実際は新規ビジネスにかける方々が、「自分たちでできる」または「自分たちと知り合いの協力で実現可能」という思いから発生する変動が多いととらえられます。それは流通を「品物をある程度そろえて配送するだけ」と勝手に思い込んでいる事業者があとからあとから出てくるからなのです。皆さんが苦労してきた仕入先とのネットワークやリテールサポートなどはすっとばして、売れそうだから売ってしまい、始めるととたんに壁にぶつかるという連続です。そこでさらに暴挙に出る事業者も存在するようですが、既存の流通チャネルを生かせば細かい問題が一挙に解決することに気づいて頼ってくるという流れも確かにあります。流通業の業態別アプローチは地球環境の変化に何億年もかけて対応してきた植物のような感じで、アプローチといえるものではありません。しかし暴挙に出る事業者にやられっぱなしではなく、いま流通業がやるべきことはこれまで培ってきたノウハウ/実績のアピール、流通プロセスの正しい運用、流通の正しいビジネスプロトコルとリスクマネジメント、オンサイト(納品や店頭陳列時の現場)での問題対応、行動基準原価(ABC/M=儲かるところだけ手をつけて損について考えないことを問題視しています)、チャネル政策(カテゴリや小売業業態によってやり方を変えてきた事実について)をきっちりと訴えていくことが必要だと思われます。
アピール、プロセス、プロトコル、リスク管理、オンサイト・オペレーション、アクティビティ管理、チャネル別対応を訴えましょう。


つづく(次回は「(4)アプローチ方法の設定(その6)」です)

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