卸売業向けインストラクションコース

卸売業の情報システム − コンセプト設定編

第21回「アプローチの方法の設定(その3)」

卸売業の情報システム創りに際して、どのようなコンセプトを描くべきかをカストプラス流にアレンジしてご紹介いたします。

(4)アプローチの方法の設定
卸売業のコンセプトを具体的に設定する時、なかなか企業全体の戦略にバランス良くテーマ設定できないことがありますので、ここではそれを少し整理できるように考えました。卸売業のシステム化につながるアプローチを分類整理してみます。

F生産性向上による効果
厳しい経済状況下において企業活動の中では生産性向上が最も期待される改善です。生産性が上がれば同じ売上でも経費が下がりますので、卸売業の企業経営には欠かせないテーマだといえます。生産性には物流作業生産性(庫内・庫外)と販売生産性(営業・営業事務)、仕入生産性、経理事務生産性などがあります。卸売業において、ひとことで生産性というと物流作業のことを指していることが多いといえましょう。しかしそのほかの生産性もあると認識していただきたいと思います。
さて、生産性向上はどのように実現するか?ということについて悩ましくまた、難しく感じることもあるかもしれません。しかし無駄の排除や他に影響を及ぼさない部分の合理化などから始め、それができてきた段階で取引先とのさまざまな約束や条件がお互いのために改善しながらスピードアップできることがあれば取り組み事業として検討すべきでしょう。さらに進んできた段階では、業界や地域での標準化や協定によってスムースに事業活動が展開できるように改善します。これらは手順という解釈ではなく、まずは自らきちんと業務システムを構築し、そして自社と取引先との関係における問題課題を少しでも解決し、そして地域や業界全体の最適化目標を明確化し共有するという対象範囲の広さの違いを認識していただきたいという思いで指摘したのです。
生産性があがることに加えて、その努力や成果は他の業種や地域からの評価を高める(努力や成果がない場合はおとしめる)結果を生むこともあります。一方諸刃の剣のごとく成果が無意味な価格競争に費やされるようなことがないように経営者は生産性指標を他社と比べ、成果についての評価額分の社員や取引先への還元を優先すべきでしょう。気をつけないと生産性向上がすべて値引きで失われて振り出しに戻るように、また次なる改善を求められるようになります。実際、これがしばらく繰り返されたことで、生産性が高くなると値引きが増え、努力していない業態へ利益が流れすぎ、肝心な卸売業の発展につながらずつぶしあいになったのです。数が少なくなってからの成果は小売業側からすれば選択肢が激減したり、新しいやり方がローカルでは築きあげられなかったりするというマイナスが多いものでした。大手と大手では合理性や価格マッチングがあっても市場全体ではすきだらけのマーケットを作ってしまったのかもしれません。その分ネット販売はそうしたすきだらけのカテゴリーでは花盛りです。
生産性向上は宝物です。これからは大きな改善は思いつかないかもしれません。小さな改善を積み上げて成果を出すことになります。大事に使っていきましょう。

G精度向上による効果
正確に処理ができるということはいまの企業活動においてはもっとも細心の注意を払って実現しなければならないテーマです。しかし反面、精度を上げすぎると他社との競争に負けることもあります。たとえば出荷検品を3回も4回も行うようなことです。ひとつひとつの作業精度を上げていき、満足なレベル(たとえば出荷作業全体で100万行に2〜3回のミス以下とするなど)を企業がおかれている環境にあわせて設定すると良いでしょう。しかも最後の検品の工程でクリアしようとせずに各工程の精度を徐々に上げていき検品はしなくても十分であるくらいの作業編成にすることが近道であったりします。現実にスキャンピッキングに自動重量検品を加えることで検品工程をなくしている例もたくさんあります。ただしこれは、コストがかけられなくて検品を省略し、クレームが来たら商品を急いで届ければよいという感じとはまったく異なります。商品供給のサービスとして品違いは、卸売業の程度が疑われるポイントです。品違いやバラ詰め合わせの箱ごと間違ったなどということを、完全になくしていくつもりで望みたいものです。
数量違いが発生することも卸売業の物流システムの実力を判定するために使われる指標のひとつなので、相当気をつけて物流システムを構築する必要があります。無線カートピッキングでも(重量検品機能付きでない場合は特に)いったんピックしたものをもう一度数えるという検品工程を無視してはいけません。ピッキングしたその場で数えるから効率が上がるのに、数えないなどということでは省略しすぎです。加工食品卸売業などでは盛んに賞味期限のチェックが行われているようですが、日用品化粧品の業界などでも電池やペットフード、携帯カイロや一部の化粧品などでしっかりと期限の管理を行わなければならず、加工食品と同様のシステム化が必要になってきています。いま述べたような精度は直接売上増加には貢献しないかもしれませんが、信頼性はとても上がります。取引先に選ばれる卸売業になることが究極の成果といえましょう。
精度向上には多くのハードルと見た目の勘違いがたくさん潜んでいます。精度の指標化と、なぜそれがうまくいくのか?という理由のところをしっかりと築いて欲しいと思います。

Hローコストオペレーションによる効果
生産性と精度を向上させることは卸売業の努力として最も重要なことだと思いますが、その実現のためにはコストが必要になってしまいます。できる限りコストをかけずに生産性や精度を向上させることができればよいのですが、なかなかそうもいきません。生産性向上により得られた利益の半分くらいは精度向上に使って欲しいと思います。速くて正確ということは無敵にも思えます。あとは値段が安ければよいのですが、価値を認めない社会では、安かろう悪かろうをこぞってチョイスする傾向があります。不況が続き消費者・生活者のためではなく安いことが目的となり、品切や品不足よりも安いものが並んでいることこそが店の存在価値だといわんばかりの商談が乱れ打ちされています。実際は多少安くても売上は伸びないという期待はずれな結果になりがちです。ローコストオペレーションとはしっかりした設計思想(生産性・精度向上)で構築された業務システムが費用構造への影響を最小限にとどめることにより、従来価格で販売できる程度に安く業務実行できることをいいます。しかしこの実現が単に値引きにつながるだけだとすれば、価値を認めてもらうための活動を展開しなければ損ばかりです。物流センターを見てもらいましょう。営業提案資料を特別だと知らせましょう。メーカーとも協働で多種多様な努力・成果があることを宣伝しましょう。25年前の単純な時代と違ってわかってもらうことも必要なのです。
近年ではこうした実情があってか、このローコストオペレーションという言葉が好かれていないのですが、本質的には何も間違っていないので高度に進化する姿を想像して未来へ向かって欲しいものです。


つづく(次回は「(4)アプローチ方法の設定(その4)」です)

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